カワウの食害対策

緊急告知: カワウが狩猟鳥獣に指定されました。


【生態と被害状況】
カワウはアユを好んで食べます
集団で潜って魚を食べます
頭から飲み込んでしまいます
@形状
カワウは鵜飼で使っているウミウと似ていますが、カワウの方が多少小型です。
体長約80cm、翼開長約1.3mの褐色味の黒い鳥で、繁殖は秋〜冬に行われ3〜4個を産卵して1〜2羽が巣立つことが多いようです。

A生息域

普通は河口付近などに棲みついて魚を主に食べていますが、最近は都市化の影響などで河口を追われ中流域から上流域へ移動して棲み付いてしまい、上野村や赤城大沼などへの飛来も見られるようになってしまいました。


B捕食量と被害額

捕食量は1羽が一日に約500g食べる(体重の3〜4分の1)といわれています。他の魚食性の鳥に較べ、カワウの場合は集団で飛来して大量に食べてしまうので被害が大きくなっています。
漁業被害額は、平成16年3月の群馬県の試算によると年間で約97トンの魚を捕食し約2億3千万円となっています。
【生息数】
群れで飛来します(約50羽)
満腹のあとは羽を乾かします
カワウがいる所にはサギも集まります。
@概要
戦前は狩猟鳥となっていて、大正12年〜昭和4年の間に59,181羽の捕獲記録があり、昭和21年に非狩猟鳥に指定されました。
昭和40年代には全国で3,000羽程度とレッドデータブックに載るほど激減していました。
その後、徐々に増えてきて現在の生息数は、全国で6万〜6万5千羽、関東地方には約1万7千〜2万羽が生息すると言われています。
群馬県内では時期によって変動が有りますが、約600〜1000羽が生息または飛来していると言われています。

A調査データ
・ガン・カモ一斉調査:平成16年900羽、平成17年629羽
・群馬県漁業協同組合連合会調査:平成16年970羽
・群馬県内で生息・飛来が多いのは、多々良沼228羽、高津戸ダム149羽(平成15年調査)
・ぐんまの魚振興室調査(平成17年)、4箇所のコロニー、7箇所のねぐらを確認、804羽
・近県の生息数(平成17年)
 千葉県6,353羽、栃木県2,839羽、埼玉県2,206羽、東京都1,821羽
【カワウ被害対策】
コロニーのカワウ

つり針に付けたニジマス

かかし

糸張り(反射テープ併用)

忌避テープ

反射板

ロケット花火

ササ流しと目玉マーク(手前石)


魚礁(大きな岩とくさりで?いだ石)

【食害防止】

@銃器による駆除
群馬県では昭和50年代後半から飛来が見られるようになり、平成8年頃から追払いを開始し、平成12年から有害鳥獣駆除(銃器)による捕獲を行ってきました。
(捕獲数:H12年98羽、H13年145羽、H14年106羽、H15年154羽)
《銃器駆除の問題点》
・銃器による駆除は安全に撃てる場所が限られてどこでも出来る方法ではありません。
・カワウが主に捕食する時間は日の出前・日の入り後ですが、その時間帯は銃器が使えません。
・生息数は駆除で減っても3ヶ月程で他地域からの移動によって回復してしまいます。
・コロニーでの駆除は分散を助長し、かえって生息域を広げてしまう恐れがあります。

A釣り針による捕獲
・銃器による駆除の問題点から、平成16年度からは、生きた魚を針につけてカワウを釣って捕獲する方法を実施しました。
・生息数調整に寄与する捕獲数ではなかったが、県内各漁場で容易に実施ができ追い払い効果はあったと思われます。
H16.10.411.14の期間、13漁協で49箇所、250羽の捕獲許可→14羽捕獲)
H17.03.106.30の期間、14漁協で50箇所、200羽の捕獲許可→10羽捕獲)
《釣り針捕獲の問題点》
・法定猟具として認められていないため、あくまでも調査研究目的です。
・捕獲方法を習得していないと捕獲効率に較差があり、捕獲できないと実施しなくなります。
・安全確保や他の鳥種保護のため、常時の見張りが必要で実施者から敬遠されてしまいます。

Bかかしによる追い払い
・かかしによる追い払いは有効性が認められているが、慣れによる着水も見られます。
・慣れを無くすために、1週間ごとの場所の移動や服の着せ替えなど細かな管理が必要です。
・風によって動くかかしは有効であるといわれています。
・服の色は黄色や白色の方が有効であるといわれています。

C糸張りによる追い払い
・針金、テグス、防鳥用の糸を川の流れに直角に張り巡らす方法です。
・糸を張る間隔をなるべく狭くし、水面からの高さに変化をつけて着水・離水しづらくして追い払いを図ります。
・糸だけでなく、反射テープや忌避テープとの併用が有効です。
・渓流釣りなどでじゃまにされ切断等をされてしまうため、釣り人の理解を得る必要があります。

D忌避テープによる追い払い
・カラス防除のため市販されている黄色い(カラスは黄色を嫌うそうです)忌避テープを川に5mおき位に設置します。
・マイナスイオンも出しているため有効であると言いますが、効果は不明で実験中です。

E反射板による追い払い
・アユの迷入や流下防止のため、アルミ板をいくつも川の中に吊り下げたもので、ある漁協で設置したものです。
・カワウへの効果は不明ですが、可能性はありそうです。

F花火や爆音器による追い払い
・ロケット花火やスズメ追いの爆音で追い払います。定期的な音は慣れの心配があります。
・住宅街などでの早朝実施は騒音問題が発生する恐れがあります。

G笹流しによる着水防止
・放流初期の群れで泳いでいる時期と場所で有効であると言われています。
・竹を切って根元部分を針金や丈夫なひもで石などに固定すします。竹を何本か連結したものの方が効果大と言われています。
・糸張りと同じく、渓流釣り等のじゃまになるため釣り人の理解が必要です。

H目玉マーキングによる着水防止
・常時休憩する石等にスプレーで目玉マークを書く方法です。
・赤い色で試して見ましたが防止効果は不明でした。黄色を嫌うという説から黄色スプレーで再試験を行ってみたいと思っています。

I馴致放流による食害軽減
・放流時に川の中に大きなカゴを設置し、1週間ほど川の環境に慣らした後放流する方法です。
・群れる時期から分散する時期に入るまで保護し、川の環境に慣れて遊泳力等が付いたときにカワウの食害から逃れる率が高くなるという理論です。
・他県で実施試験を行った結果、有効な食害軽減効果があったと言われています。

J漁礁(隠れ場)作りによる食害軽減
・岩や鉄パイプ、木材、竹などを組み合わせて漁礁を作って魚の隠れ場所を作る方法です。
・群馬県内では多々良沼(パイプを井桁に組んだ漁礁)や神流川・渡良瀬川(石を組み合わせたもの)に設置して効果を調査中です。

K多種組合せによる被害防止
・追い払いや防除、着水防止などで確実に効果がある方法が確認されていないため、有効性が有ると言われている方法をいくつか組み合わせて防除する必要があると思います。
・鳥獣被害は鳥と人間のせめぎ合いですので、手を抜いた方が負けです。地道な追い払いの努力を続けていくことが大切です。
・時間も手間も掛からない安易な防除や駆除法はありません、常に人の圧力をかけて追い払うことに主眼を置いていくしか方法は無いと思いましょう。

【狩猟鳥への指定】
・カワウの狩猟鳥化については、環境省に対して都県の水産行政担当部署及び漁協関係団体が要望してまいりました。
・平成19年4月20日までパブリックコメントを実施、4月27日に開催された中央環境審議会(野生生物部会)において、環境大臣より諮問された「狩猟鳥獣を定めることについての省令改正」に関して審議が行われ諮問のとおりとして差し支えない旨答申されました。
これを受けて5月25日公布、平成19年6月1日付けで施行されることとなりました。
・しかし、何処でも何時でも誰でも撃てる訳ではありません。狩猟期間の安全な場所で猟銃の許可を受けた人だけが撃てる事になります。それ以外の時期は有害鳥獣駆除の許可を取る必要があります。
 さらに、コロニーでの捕獲行為はカワウの分散を助長することにつながると言われていますので慎重に行なわなければならないなど課題は沢山あります。
・狩猟鳥に指定されたから全てが解決するわけではありませんので、これまでと同じように追い払い行為は継続して銃による捕獲を併用するようにしたら効果が上がるのではないでしょうか。

カワウの狩猟鳥指定されました。詳しくはこちらをご覧ください。
【広域での対策】
・環境省は平成17年度からカワウに関する地域ごとの広域協議会を発足させて、移動範囲(単位)ごとに広域での生息状況の把握と防除などの取り組みを開始しました。
・関東カワウ広域保護管理指針の策定と防除対策などの検討を行っています。
  (関東7都県、福島県、山梨県、静岡県、環境省、水産庁、国交省と専門家)
・広域協議会によって関東広域圏で一斉追い払い(4/194/28)を実施しました。
・群馬県では10漁協の協力で行い39カ所で効果測定を行いました。実施前
941羽→実施後696(26%の減)の効果がありました。
【他県の状況】
平成16年度近県の駆除実績:栃木271()、神奈川71()、千葉31()、埼玉28()、東京11羽()、山梨41()()
・滋賀県は琵琶湖中心に推定
5千羽が生息し、6千羽を捕獲(銃)

TOPに戻る