アユを取り戻す全国の集い in ぐんま(第一回第二回


※ 第二回「アユを取り戻す全国の集いinぐんま」

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平成17年1月22日(土)午後12時30分から午後4時30分まで群馬県前橋市の県民会館小ホールで開催された概要です。

総合司会 三笑亭夢丸(落語家・釣り番組レポーター)
主催者挨拶 アユを取り戻す全国の集い 群馬県実行委員会 委員長 大河原忠義
共催者挨拶 群馬県知事 小寺弘之
来賓祝辞 群馬県議会副議長 原 富夫
話題提供@ @群馬のアユは取り戻せるか? 発表者:小泉 正人(ぐんまの魚振興室長)
話題提供A A 人工産アユの生産と放流 発表者:吉沢 和倶 (群馬県水産試験場)
話題提供B B 河川おけるアユの生態 発表者:高橋 勇夫(高知県河川生物コンサルタント)
話題提供C C 地域住民との環境づくり 発表者:阿久津 貞司 (子持村長)
話題提供D D ダム下流における影響軽減への取り組み 発表者:野村 完一(片品川を生き返らせる会)
話題提供E E 魚を取り戻すために 発表者:野嶋 玉造(釣り人)
フリートーク 話題提供者5名(阿久津村長を除く)で夢丸師匠の司会でフリートーク
閉会 荒巻良充委員

※ 第一回「アユを取り戻す全国の集いinぐんま」

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平成16年1月25日(日)午前10時から午後4時まで群馬県前橋市の群馬会館ホールで開催された概要です。

総合司会 三笑亭夢丸(落語家・釣り番組レポーター)
主催者挨拶 アユを取り戻す全国の集い 群馬県実行委員会 委員長 大河原忠義
来賓祝辞 群馬県議会議長 矢口昇
話題提供@ @冷水病ワクチンの開発について(河原栄二郎:福山大学助教授)
話題提供A A長良川におけるアユ釣りの現状と課題について(白滝次郎:郡上漁協参事)
話題提供B B魚にとって棲みやすい川づくり(土屋十圀:前橋工科大学教授)
共催者挨拶 群馬県知事 小寺弘之
話題提供C 群馬県における冷水病対策と種苗生産(信沢邦宏:群馬県水産試験場主席研究員)
話題提供D 元気なアユを取り戻す決断(沼沢勝義:小国川漁業協同組合代表理事組合長・夢丸師匠と対談)
話題提供E 釣り人からアユ復活に望むもの(野嶋玉造:釣り人、がまかつ・東レ・スワンズフィールドテスター)
フリートーク 話題提供者6名に福岡一巳氏が参加して夢丸師匠の司会でフリートーク
決議文採択 決議文朗読(福田睦夫副委員長)→採択
閉会 荒巻良充委員

話題提供者・パネラー・司会者のプロフィール(敬称略)

河原 栄二郎(カワハラ エイジロウ)(福山大学生命工学部助教授)
1959年生まれ、広島県在住。水産大学校増殖学科卒業、高知大学大学院農学研究科修士課程修了、愛媛大学大学院連合研究科博士課程中退、農学博士(愛媛大学)北里大学水産学部助手、同水産学部講師、福山大学工学部助教授を経て現在に至る。魚類免疫学を専攻、「魚類の細菌性疾病に対するワクチン開発に関する研究」「魚類の腸管や体表における粘膜免疫に関する研究」「魚介類の生体防御能に及ぼす環境ホルモンの影響に関する研究」が研究テーマ。

白滝 治郎(シラタキ ジロウ)(郡上漁業協同組合参事・ダイワ精工フィールドテスター)
1958年生まれ、岐阜県在住。近畿大学農学部水産学科卒業、郡上漁業協同組合へ就職、同組合参事に就任、現在に至る。職漁経験を持つ父に師事し長良川で幼少からアユ、アマゴ釣りに親しむ。伝統の郡上釣りに最新釣法を取り入れる。第9回、10回ダイワ鮎マスターズ全国決勝大会出場。

土屋 十圀(ツチヤ ミツクニ)(前橋工科大学教授)
1946年生まれ、東京都在住。中央大学大学院理工学研究科修士課程修了、工学博士(東京工業大学) 、河川環境工学、水文学、水環境工学を専攻、著書に『親水工学試論』『水文水資源ハンドブック』『都市の中に生きた水辺を』等がある。土木学会、水文水資源学会、日本水環境学会、国際水理学会に所属、川場村の友好の森づくり事業運営委員会や吾妻川流域水土保全対策検討委員会等の委員を務めている。

信澤 邦宏(ノブサワ クニヒロ)(群馬県水産試験場主席研究員)
1947年生まれ、群馬県在住。東京水産大学増殖学科卒業。群馬県水産試験場に入職後、群馬県水産学習館、群馬県流通園芸課等で勤務し、現在に至る。(魚類防疫士、魚類防疫員)。水産試験場では、魚病研究、アユの人工種苗生産技術、アユの放流技術等を研究テ−マとしてきた。

沼沢 勝善(ヌマザワ カツヨシ)(小国川漁業協同組合代表理事組合長)
1937年生まれ、山形県在住。小国川漁協監事、代表監事、理事を歴任し現職に至る。釣り人とその家族も楽しめる川づくり・釣り場管理を行って、小国川「松原鮎」で全国のアユ釣りファンを魅了している。平成 11年に漁協が事業・管理主体となって県産稚魚育成事業に取り組み,稚アユの中間育成を始めた。

野嶋 玉造(ノジマ タマゾウ)(がまかつ・東レ・スワンズのフィールドテスター)
1949年生まれ、群馬県在住。小学5年生から鮎釣りを始める。G杯で決勝までに230匹を釣り上げた記録、友釣りで鮎の大きさの日本記録(500g)を持つ。釣りをするだけでなく10年以上前から「このままでは川が死んでしまう」と川づくりと人材育成に立ち上がる。当時から一貫して「釣り人、漁協、行政が手を組まなければいけない」と言い続けている。

福岡 一巳(フクオカ カズミ)(がまかつ・サンライン・スワンズのフィールドテスター)
1953年生まれ、愛知県在住。NTTネオメイト名古屋 課長代理第11回G杯優勝を始め、各大会の優勝歴多数。中部地区を主体に川づくり、人材育成に前進中である。「アユの復活無くして本当の楽しい釣りは無い」がモットー。
三笑亭 夢丸(サンショウテイ ユメマル)(落語家、TV番組レポーター)
1945年生まれ、東京都在住。三笑亭夢楽門下に入門、夢八となる。真打ちに昇進して夢丸を名乗る。「ルックルックこんにちは」のレポーターでおなじみの古典落語の本格派。現在、TV東京の東京最新レポートや全国U局ネットのフィッシングナウをレギュラー番組としている。絵画、釣り、魚の飼育を趣味とし釣りの腕も相当なものである。
冷水病ワクチンの開発について

福山大学生命工学部 助教授 河原栄二郎

 アユの冷水病は1987年に徳島県で最初に確認され、現在では全国各地のアユ養殖場および河川で発生し、養殖業、種苗放流事業、遊漁などに大きな被害を与えています。本病はフラボバクテリウム・サイクロフィラム(Flavobacterium psychrophium)という細菌を原因とし、湖産、人工、海産のいずれのアユでも発生します。

  また、本菌はオイカワやウグイなどの野生魚からも分離されることから、全国の河川に蔓延していると考えられます。 したがって、本症の対策として、病気の発生を予防するためのワクチンが有効と考えられ、その開発が待たれています。

 ところで、ヒトや動物には免疫が備わっていて、外来の異物(抗原)が入ると特異的に応答し、記憶しておくことができます。二度目に同じ抗原が入ったときには、一度目に比べてすばやく、より強い反応が起きて体内から抗原を排除することができます。この仕組みを利用したのがワクチンで、あらかじめ無毒化した病原体(細菌やウイルスなど)を生体に投与しておき、有毒な病原体が侵入したときに同様にすばやくて強い免疫反応を生体に引き起こさせるものです。

  幸いサメ・エイなどの軟骨魚やアユ・ブリなどの硬骨魚には免疫が備わっておりワクチンが利用できます。ちなみに、エビ・カニ・貝などの無脊椎動物には病原体を排除する機能はありますが、免疫は備わっていないので、ワクチンは使えません。

 さて、魚へのワクチンの投与法は注射法、経口法(餌にワクチンを混ぜて与える)、浸漬法(ワクチン液に浸ける)などがあり、いずれにも長所と短所があります。すなわち、注射法は確実で大きな効果を期待できますが、小さい魚には投与困難で、たくさんの魚に注射するのには労力を必要とします。経口法は魚にストレスを与えなくて済みますが、効果が乏しく、投与量の把握が困難です。また、浸漬法は小さい魚にも応用可能ですが、やはり効果が乏しく、大きな魚には不向きで多量のワクチンを必要とします。 これまでに、本病のワクチンとしてホルマリンで不活化した本病原因菌を用い、注射法でアユに与えたのち、実験的に病気を発生させてワクチンの効果の有無が調べられ、有効であることが明らかになっています。しかし、アユ稚魚に注射をすることは難しく、またたくさんの魚を処理するには手間がかかります。そこで、現在経口法や浸漬法で投与するワクチンの開発が進められています。

 発表者の研究室では、まず本病のワクチンとして原因菌の細胞壁から抽出した成分(リポ多糖)を用い、アユに注射法で投与して免疫反応について調べたところ、高い反応が認められたことから、この成分がワクチンとして有効ではないかと考えました。次に、浸漬法でこの成分を与えたのちに免疫反応を調べましたが十分な反応は認められませんでした。

 ところで、浸漬法で投与したワクチンは魚の体表(皮膚)から体内に取り込まれて免疫応答を誘発します。このことは、すでに市販されているアユやニジマスのビブリオ病のワクチンの作用機構に関する研究などで明らかになっています。同様に、冷水病のワクチンも浸漬法で投与するとアユの体表から取り込まれると考えられます。

 したがって、浸漬ワクチンの効果を上げるためには、ワクチンが確実に体表に吸着して取り込まれ、免疫応答を誘発する必要があります。そこで、体表の粘液中に含まれる凝集素(レクチン)に注目したところ、アユの体表粘液中の凝集素はウサギの赤血球とよく反応し、またウサギの赤血球は本菌の細胞壁成分と結合することが明らかになりました。

 最近、これらの性質を利用し、ウサギの赤血球膜を結合させた細胞壁成分をワクチンとして用いて、浸漬法でアユに投与したのちに、実験的に本菌に感染させて有効性を調べました。

 その結果、ワクチンを投与したアユは無投与のアユと比べてたくさん生き残り、有効であることが認められました。また、生き残ったアユの体内から本菌は検出されませんでした。

 これらのことから、ウサギ赤血球膜を結合させた細胞壁成分を用いたワクチンはアユの体表に確実に吸着して体内に取り込まれ、特に体表での免疫応答を高めて、冷水病菌の体表からの侵入を防ぐので効果があるのではないかと考えられます。

 今後は、ウサギ赤血球膜を結合させた細胞壁成分のアユに対する作用機構を明らかにするとともに、ウサギ赤血球膜に代わる物質を検索し、作製が簡便で実用的なワクチンを開発する必要があります。

長良川におけるアユ釣りの現状と課題について

 郡上漁業協同組合 参事 白滝 治郎

1 はじめに

長良川上流郡上地区、海のない岐阜県の山間部にあって古くからアユに代表される川魚が貴重なタンパク源として重宝されてきました。「郡上釣り」と呼ばれる独特かつ完成された友釣りの技術が生まれ、彼らが漁獲したアユは「郡上アユ」ブランドで全国の食通の舌をうならせてきました。また、アユ釣りのメッカとして全国各地から多くの釣り人の皆さんに訪れていただいております。そんなこの地におけるアユ釣りの現状と課題、郡上漁協の取り組みを紹介しながら、長良川とそこに棲むアユの将来について考えてみたいと思います。

2 アユ釣り(アユ漁業)の現状について

アユ漁業について、ここ20年ほどの移り変わりを見ますと、釣り人(遊漁者)の状況は平成3年〜6年ころをピークに減少傾向にあり現在では昭和50年代の終わりをも下回る状況となってきました(図1)。

漁獲高についても同じような傾向が見られますが、放流量の増加が必ずしも漁獲につながっていない現状が見て取れます(図2)。

1シーズンに注目すると、解禁以降梅雨明けまではあまり釣れない状況が続き、その後徐々に調子が上がって9月いっぱいくらいまでがよく釣れるような感じです。

3 アユ漁業の抱える問題点と漁協の取り組み、今後の課題について

釣り人からは、「昔と比べるとアユが釣れなくなった」とか「釣りにくくなった」とかいった声が聞かれます。その原因としてアユそのもの問題と、河川を取り巻く環境の問題が考えられます。

(1)アユは変わったか

@天然遡上アユについて

ここ数年の傾向として長良川においては遡上時期が遅くなってきており、遡上魚も小型化してきているような気がします。そのために、天然遡上アユが漁獲されるのがシーズンも中盤以降になってからという現象が出てきているように感じられます。

A放流アユについて

従来、友釣り対象魚として抜群の支持を得ていた琵琶湖産稚アユですが、冷水病の蔓延により非常に厳しい状況になってきました。一日も早い冷水病の撲滅を切望します。

今後よりいっそう期待がかかるのが人工種苗です。岐阜県には全国に誇り得る種苗生産施設があり、今年度は55tの生産量が見込まれています。現在は海産系の種苗を中心に生産しており、郡上漁協でも放流量全体の50%以上をこの種苗が占めています。

私どもの漁協では釣り人のニーズに答えるため、友釣りに良く掛かる種苗を求めて一昨年、昨年と当地群馬県から種苗を導入し、放流効果を見てきました。単独放流によって友釣り非常によく掛かる種苗であることを再認識した一方で、他の種苗との混合放流ではその効果を見出すことはできませんでした。

将来的には、丈夫で闘争心が激しく友釣りによく掛かるアユが安定して供給されることを期待します。

(2)河川環境はどうか

@地域自然環境について

長良川の源流部は農地開発や観光開発によって病んでおり、流域の山林は人工林が多い状態です。山の保水力の低下は河川の通常水位の低下、降雨時における急な増水や土砂・濁水の流入を招き、アユにとって非常に厳しい状況になってきています。

A河川の形態について

流域の環境悪化に伴い、河川の形態も大きく変わってきています。河川災害の復旧工事によって河床は不安定になり、河床が落ち着いてアユが着くようになるまでには数年を要します。工事の施工にあたっては、漁協に対しても意見を求められ、できるかぎりの要望はしながら、河川管理者もできる限りの対応はしていただいておりますが、一度人の手が入った漁場はなかなか元に戻らないのが現状です。あえて人間が手を加えなくてもよいような流域の環境を作っていきたいものです。

B外的影響について

その他に、カワウによる食害の問題や釣り以外の水上レジャーとのトラブルの問題があります。いずれも数年前から漁業関係者の頭を悩ませている問題であり、漁協としてもできる限りの努力はしていますが、なかなか抜本的な解決策が見いだせない状況です。

いずれにしても現在長良川が抱える問題は、非常に多岐にわたっており、一朝一夕で解決できるものではありませんが、漁協はアユをはじめとする魚類にとって、そしてそれらが棲む川にとっての「守り」としての使命をもっており、いずれの課題・問題に対しても後手に回ることのないよう注意を払いながら対応して、釣り人の皆さんにすばらしいアユ釣り場を提供していかなければならないと考えています。

さかなにとって棲みやすい川づくり

                 前橋工科大学・大学院工学研究科 教授 土屋十圀 

1治水・利水からいきものと共生する川づくり

(1) 河川法の改正と多自然型川づくり

平成2年、国土交通省が「多自然型川づくり」の通達を全国の河川の行政機関に送付した。しかし、当初は地方まで十分理解が得られず、その実施は試行錯誤の期間がつづいた。河川の現場への適用は従来のコンクリート三面張りのハードな河川技術や工法と理念が大きく転換したからである。治水・利水が中心の河川管理から環境・いきものも重視される川づくりになったのは平成9年の河川法改正によって大きく前進した。同時に、住民参加が河川法にも加わり川づくりは官庁主導から川を利用する市民の声が反映されるべく川づくりに転換してきた。

(2)さかなにとって棲みやすい条件

水野は河川生態学の立場から魚類の生息条件を4つ上げている。即ち、1.食餌となる水生生物が存在すること。2.産卵し、仔魚・稚魚が成長できる河床形態を有すること。3.十分な溶存酸素があること。4.河況が変化に富んでいること。また、マクロスケールで流域の視点でみると、川の連続性が確保されること、栄養塩・エネルギーが供給されること、人為的な汚濁が極力ないことが上げられる。更に、ミドルスケールで見ると、川づくりの護岸構造は直線化をさけ、できるだけ自然の蛇行形態を確保すること。水辺の護岸は多孔質な構造にすること。材料は礫・木材など自然素材を生かした構造にする。洪水などの自然のダイナミズムに委ねた河川管理を行うことが重要である。

2河川の自然復元と河川生態系

(1)河川生態系の特徴と攪乱

川のいきものにとって河川は厳しい環境であり河川生態系は常に変動の繰り返しである。川のいきものに対するインパクトは「攪乱」と呼ばれているが、その種類を区分すると「自然的攪乱」と「人為的攪乱」がある。前者は洪水や渇水、火山噴火・泥流、土砂流出、温泉水・酸性水などであり、後者は水の汚濁・汚染、外来種の侵入、ダム・堰などの建設、河川改修工事などである。これらはその種類と規模によっては大きなダメージを受けることもあるが、復元・再生までは長時間を要する場合もある。川のいきものはこれらのインパクトを重複した「攪乱」として絶えず受けながら存在しているという事実である。

(2)河川改修や洪水といきものへの影響

河川改修工事が長年連続して行われた河川と河川工事がほとんど行われなかった近接した二つの河川の底生動物の種類数、個体数を比較した調査を行なった。その結果、渇水期に集中する河川工事によって底生動物は激減するが回復も早い。しかし、河川改修による平瀬化はオイカワなどに占拠される。また、ギバチなど底息性の魚類は激減し、回復までに長時間を有する。一方、洪水のインパクトに対しても減少するが底生動物の回復は比較的速いことが分かった。また、同じ河川を対象とした約16年間の河川変動調査から浮石と沈み石の河床環境は大きく変化し、浮石の消滅が顕著になっている。

3川の流れと瀬・淵構造

(1)瀬・淵の分布様式と「流相」

川の流れの「瀬と淵」の名称は本来、河川工学の用語ではなく可児、川那部らの「河川生態学」の言葉である。「河川工学」は川の流水形態に関する「河床変動」、「水理現象」などの調査・研究に実務的な興味が向けられていた。したがって、河床が安定するための物理的現象の把握と治水技術の向上が重要であった。一方、釣り師の世界ではこれら川の流れの諸現象を「流相」と呼び、平瀬、早瀬、チャラ瀬、カンガン瀬など多様な用語で区分している。これら言葉の違いを調整する河川環境用語が必要であり、四つの流れと流相の区分を示す。

(2)瀬・淵構造の光環境と藻類生産量

瀬・淵構造は河川形態の上から一対を成している。アユなどの高次消費者が捕食する珪藻などの藻類は河床砂礫の状態と光量に依存している。早瀬、平瀬、淵における光環境と河床の砂礫に付着する藻類の定量的調査を実施した。その結果、淵より平瀬、平瀬より早瀬において藻類生産量は大きいことが分かった。これは日光の散乱が砂礫の隅々まで投射することができる早瀬の礫の隙間構造にあることがわかった。即ち、浮石構造による光の「フラッシュ効果」(沖野ら)の存在を確認することができる。

4最近の水質問題

(1)都市河川のアユの遡上とアンモニア性窒素

都市河川の代表的な、多摩川、神田川では近年、天然アユの遡上が見られる。特に、神田川では1995年頃から新宿区の面影橋下流でみられるようになった。この要因は、神田川上流には下水処理場があり、従来から活性汚泥法で処理し放流していた。しかし、処理方式が砂ろ過施設となり、硝化促進運転にすることによって河川のアンモニア性窒素を減少させることができた。アンモニア性窒素が2mg/lを下回るころからアユの遡上が急激に見られるようになった。

(2)多摩川の冬季の濁水現象

近年、多摩川の中流、上流では冬季に濁水現象がみられる。ダム管理の放流による堆積土砂が原因と考えられている。このため春先に山女の放流ができない自体が起った。濁水は光環境を悪化させるだけではなく、このダムに堆積した土砂はシルト分を多く含み河床に付着し、藻類の生産を阻害している。

濁水の主因は水温が2〜5℃と低くなる冬季は粘土・シルトと水との密度差が小さくなり夏季の水温のときより一層、巻き上げられ易くなることにあると考えられる。また、粘土・シルト分の流出は流域の市街化という原因だけではなく、杉・ヒノキなどの森林管理が十分なされていないことが汚濁流出の要因の一つと推察することができる。したがって、今後の川づくりは「農」とも共生する川づくりが求められる。

小寺知事挨拶

 ご紹介をいただきました、群馬県知事の小寺弘之でございます。

 今日は、アユが生息する県の皆様、アユを愛する皆様が全国から23の都府県の皆様をお迎えして、ここにアユを取り戻す全国の集いというのが開かれまして、誠にありがとうございます。会場に参りますと、緑のスタッフジャンパーを着た方々があちこちにおられて、みんな元気に集まっておられるので感動を覚えました。
 県の花とか、県の木とかありますね。平成元年に群馬県の魚というのが指定されまして、これがアユとなっております。そのときに群馬県のアユの漁獲高がどのくらいあったかというと220トンでした。そして一番釣れたときには670トンだったそうであります。670トンという数字は、全国で第5位だったようであります。
 ところが最近、どういう原因かだんだん減少して参りまして、一昨年は36トンです。もう1/20ぐらいになりましたか。全国37位ということで、あまりアユが生きていない県になりました。
 こうなりますと、まず釣りを愛する人々はアユがいないわけですから寂しいわけでありますし、釣りに関連するお客さんも減ってくるし、ひいては観光客も減ってくるしということで、まずその辺が影響を受けます。

 それと同時に、アユがいなくなったということは何らかの原因があったと思うのであります。私にはその原因が分かりません。また、そういうことを良く研究していただきまして、今日のようなシンポジウムの中で研究の中でどういうところに原因があるのかというところを考えて行くのがいいのではないかと思います。
 冷水病なのか、稚魚が元気がないのか、あるいは今お話があったように河川の生態系が変わってきているのか、水質なのか、光なのか、土なのか、あるいは森林なども関係するのか。いろいろなものがあると思います。そういうことをみんながそれぞれ自分の見ているサイドから光を当ててみて、釣り人は釣り人、河川の管理者は河川の管理者、いろいろな立場があると思いますけれども、そういうところから意見を出し合って、できることならばアユを復活させて行きたいものだというふうに思います。それが単にアユのことだけではなくて、私たちが住んでいる環境を良いものにしていくことにもつながるのではないかと思うのであります。
 アユもそういうことでありますし、私は子どものころからセミに関心があって、セミが鳴いているか鳴いていないかということをかなり気にしているのですけれども、なぜかこの前橋の中心地域はセミが鳴いているのをあまり見かけないのであります。
これはなぜそうなのか、土が少なくなったのかコンクリートだからなのか。あるいはそういうことも言えるかもしれませんが、東京の真ん中もセミは鳴いているわけでありますから、それでもなさそうだし「農薬の散布かな」とか。まぁいろいろあるんだけれども、なぜかセミが少ないということなのであります。
 そういうことも些細なことだけれども、そういうことから私たちは自分たちが住んでいる自然環境がどうなっているか、その原因はどういうところにあるかということを探求していることが、これからのよりよい社会を作っていくのに大切なことだと思っております。
 私は行政に携わる(という)一つの分野を担当しております。大事な役割を担っておりますけれども、こうした原因の探求などは単に行政だけでできることではありません。そして行政がこうと決めてかかって最初からそれでやることでもないと思います。いろいろな意見を吸収したうえで、みんなと一緒になってこうした問題を考えていきたいと思っております。
 以上、長い挨拶になりましたけれども、皆さんの地域それぞれでアユが復活していきますように、そして、自然と人間が一体となって住んでいけるような、こういう地球をつくって参りたいと思っております。
今日は本当にありがとうございました。以上で終わります。

 

群馬県における冷水病対策と種苗生産

群馬県水産試験場 主席研究員 信澤邦宏

1 群馬県水産試験場における主なアユ研究及び事業の歴史
1930年〜(昭和3〜18年)琵琶湖産、海産稚アユの県内河川への放流事業及び池中養殖技術試験実施
1947年〜(昭和22年〜)琵琶湖産、海産稚アユの放流効果試験・事業を実施
1960年〜(昭和35年〜)アユ卵放流試験、海産シラスアユ養成試験を実施
1970年〜(昭和45年〜)アユ人工種苗生産に着手、大量生産に成功、人工アユの放流効果試験を実施
1980年〜(昭和55年〜)アユ人工種苗大量生産施設(中間種苗200万尾)の稼働、アユ放流各種関連試験の実施
1990年〜(平成 2年〜)アユ放流各種関連試験の継続(→アユ放流マニュアルの発刊へ)、アユ冷水病関連試験研究開始
2000年〜(平成12年〜)冷水病対策→アユ中間種苗125万尾生産施設稼働

2 アユ種苗生産の現状と今後の方向
(1)現状
・アユ中間種苗(平成15年度で継代33代)325万尾生産供給体制が確立
・継代系は「姿・形が良く、釣れるアユ」の評価を得ているが、「早期成熟のため漁期間が短い」「再生産による資源量添加に寄与できない」などの短所も指摘されている。
(2)今後の方向
・さらに人工種苗生産技術の開発及び生産コスト低減を進め、生産システム(マニュアル)の確立を図る。
・利根川水系において再生産に寄与できる新規種苗の導入を図る。

3 アユ冷水病とは
(1)冷水病の原因
・冷水病はフラボバクテリウム・サイクロフィラムを原因とする細菌性の感染症である
・条件性病原体であり魚の状態を悪くする(魚にストレスを与える)と発病する。
・至適培養温度は18℃であり、25℃以上ではほとんど増殖しない。(5℃ではほとんど増殖しない。)
(2)冷水病の特徴
・体側、尾部の潰瘍、下あご、ヒレ基部の出血や潰瘍、鰓や内臓の貧血
・1987年に養殖場のアユから初めて病原菌を検出。以来、発病魚の移動、放流などから全国に広がり養殖場、天然河川(1992年発生以来)で深刻な被害が出ている。
・薬剤による治療では再発しやすく完治が困難であり、養殖場や種苗生産施設でも治療対策が確立されておらず、当面は原因菌の侵入防止が最も有効な対処法である。(昨今、昇温処理、塩水浴でかなり効果があるとの報告あり)
・河川ではアユが最も感染数が多いが、河川で死亡したウグイやオイカワから冷水病原因菌が分離されたとの報告がある。
・主な感染経路は水平感染とされている。(生息(飼育)する水を媒介して感染する。水槽実験でアユ→アユは確認されているが、異魚種→アユは確認されていない。)
・親から子への感染は卵消毒で防御可能と考えられている。

4 天然水域における発生と被害
冷水病は天然水域で発生し、大きな問題となっている。
(魚の病気の発生は主として養殖場で問題とされ、天然水域での発生は大きな問題となることはなかった。)
(1)河川における魚病被害発生例
・穴あき病、寄生虫病、アユの冷水病
・コイのヘルペスウイルス病?
(2)アユの冷水病の発生及び被害について
・全国天然水域での冷水病の発生は1992年に確認されて以来、2002年12月現在で47都道府県のうち34の自治体で確認されている。
・全国的にアユ漁獲量・養殖生産量が低下している。
・群馬県での漁獲量低下の原因は冷水病の他にカワウによる食害、その他の河川環境等が上げられる。

5 県内河川における防疫対策について
 群馬県では2001年から毎年「アユ冷水病防疫対策指針群馬県版」を発行している。
(1)優良種苗の供給
・県水産試験場による健全種苗の供給
県は冷水病に感染していない健全なアユ種苗を供給するため、水産試験場にアユ人工ふ化養成施設を増設し、2000年春から中間種苗325万尾、放流種苗260万尾の供給体制が整っている。
・中間育成業者からの健全種苗の供給
水産試験場で人工生産したアユ(中間種苗約0.5g)を飼育し、河川放流用(放流種苗:6〜10g)として各漁業協同組合へ出荷する。
(2)感染したアユを感染源とする感染経路の遮断?
・放流種苗の事前検査
水産試験場飼育アユ、県内中間育成業者、県外業者等の放流前に保菌検査を実施する。
・オトリアユの事前検査
オトリアユの県内供給体制の確立し、供給前に保菌検査を実施する。
・感染源の多くは発病したアユであるが、他の要因も考えられている。
(3)その他感染防御のための効果的手法の実施
・消毒技術(卵、手、足等)、輸送技術(輸送車の消毒、輸送密度等)
・放流技術(放流時の水温調整、放流時期・場所・数量・種苗の質の選定など)
・その他種苗の取扱い技術等(アユへのストレス回避)

6今後の対策として
・基本的に従来の対策を継続する。
健全種苗の供給、放流種苗の事前保菌検査の徹底等→15年度版「アユ冷水病防疫対策指針群馬県版」を改訂し、指導・普及を図っていく。
・感染経路の解明と遮断
・保菌検査の検出率の向上
・卵の消毒方法の確立、病原菌を入れない飼育方法の確立
・実用的なワクチンの開発
・感染魚の治療法の開発(薬剤、温度処理、塩水浴)と感染耐過魚の有効活用。
・耐病種の開発、感染耐過魚の選抜育種など。

元気な鮎を取り戻す決断

小国川漁業協同組合 代表理事組合長 沼沢勝善

1 環境保全と漁場管理について

河川法が改正され、環境保全が重視されている今日ではありますが、まだまだ不必要と思われる工事が行なわれています。必要以上に掘削を行い河川には石が無くなり、鮎の棲息場所である瀬や淵が少なくなり、良好な釣り場は失われています。そして不必要なダムを作ろうとしています。

昭和51年に漁協の監事になり、平成3年に理事になりました。この間、家庭排水等による水質の悪化と河川工事等による環境の悪化、淵は浅くなり瀬はなくなり平坦化していきました。組合は、河川管理者と協議をしながら工事立会いをしながらやっているのに・・。

ある日釣りをしていたら、向かい側の河川工事がすでに終了している現場で、ダンプで砂利を運んでいる、不審に思い正してみたら、残土処理だと言うではありませんか。これは明らかに工事以外のものであり、こんなことを見逃しておいたのでは河川から石がなくなり平坦化していくのは当たり前だと思いました。

組合の監視、立会いはどうしているんだ? 河川管理者は? まずこれは明確にしなければならないと思いました。監視立会い者は、帰りに工事業者の事務所に寄り、当日の日当を貰って帰る。漁業組合は工事のための立会いだから、経費は業者から貰うのが当たり前という感覚、これでは川から石がなくなるのは当然の事です。

この改善を求めたところ、今度は業者から組合が一括して金を貰い、それで組合が日を払う仕組み、これでは組合がものを言うことができなくなる、その中には費用弁償以外の分も含んでいるという。それが常識的な対応なのかも知れませんが、しかし、それでは本気で漁場を守る、環境を保全すると言うことにはなりません。

考え方が違う、自分が組合長になってやるほかないと平成6年に組合長に立候補しましたが僅差で破れ、三年後の平成9年から組合長になりました。

組合長に立候補することも、組合長になることも、私にとっては一大決心であり決断でした。川を守るその一点で組合長になったわけでありますから、建設会社からは一切金は貰わない、組合の経費で監視立会いをしていく。このことを理事会で了承してもらい漁場管理をやっています。厳しい財政事情ではありますが、組合が独自の立場で漁場の管理をやっていく、このことが重要であり、組合員からも信頼される組合となると信じております。また、平成11年からは少しでも釣り場が多くなるようにと、計画的に、許される財政事情の中でありますが、河川に、石を組合独自で10tダンプで20台ずつ毎年入れて5年になります。

今、小国川上流の赤倉地区にダム建設が計画されていて、平成16年度まで環境調査ということになっています。計画されているダムは、治水専用のダムで、水を貯めない穴あきダムです、堤高が46m、堤長300m、180億円で建設するということです。

常には水を貯めないで、雨が降って増水したときに調整するダムなので鮎や魚族に影響はないと言っているわけでありますが、増水することがなくなれば下流では川底が悪化しやすくなります。流れがゆるくなると石と石との間に砂が詰まる、石が転がることもなくなる、石についた藻は腐ってしまう、適当な出水は石を押し流し石の表面を洗い古くなった藻をはがす、新鮮な藻が生える、生態系の循環に活力を与える、カジカ等は浮石の状態のところにしか棲めない、生物にとってある程度の流速、流量の変化は必要なのです。赤倉温泉地区の数戸の温泉旅館と10数戸の民家を洪水から守るだけの治水であります。ダムのほかに治水の方法はあるのです。まず河川拡幅です、右岸側の住民は拡幅に協力すると言っているのです。ダム建設にこだわっている理由は分かりません。私たちは、この不必要なダム建設に断固反対していきます。

2 稚鮎放流、湖産鮎、冷水病、再生産について

平成9年5月23日 湖産鮎到着 430kg

・ 柳原    130kg放流  水温9.5度  全滅

・ 大谷      100kg放流  水温11度   3分の2死滅

・ 割り石    100kg放流  水温12度   3分の1死滅

・ 小松橋    100kg放流  水温12度   3分の1死滅

これは湖産鮎放流の状態です。

実に430kg中、生存が170kg、残存率40%、なんでだろう? 水温が低かったのか? 割り石、小松橋での水温12度でも3分の1死滅、河川水温も関係あるだろうが脆弱な鮎であることには間違いない、見た目は特に問題はなかったが、長距離輸送中の問題か、冷水病?

いずれにしても湖産鮎に問題があり検討しなおしをしなければならない。 湖産鮎は再生産に貢献しない鮎、むしろ阻害していると言う。県内水連理事会で湖産鮎以外の購入方向で協議したが結論が出ない。

平成10年度分として静岡稚鮎センターに買い付けに独自で行き300kg確保、最上産、1300kg、中新田産700kg(独自購入)などで、不足分として、やむを得ず湖産を1300kg入れることになりました。

湖産鮎は、冷水病の心配がある、下流に放流することにしました。上流に放流すると川全体が冷水病になる心配があります。

平成10年5月24日湖産鮎200kg、丹生川漁協分200kgとあわせ400kg。

鮎が何か変だ、赤い、ふわふわしている病気だ、こんな鮎放流できない、直ちに産地業者に電話し、返却することにすると業者は発送段階では特に問題はなかったと言う。また、料金は要らないので引き取ってもらいたいと言う。

病気と判断されるのでこんなものを放流したら他の鮎も病気になってしまう、くれるといってもいらない、経費一切こちらで持っても送り返すと強権に突っぱね返却しました。丹生川の組合長も同調してくれました。

kgほど内水面水産試験場に持ち込み検査してもらったところ。冷水病菌が検出されました。湖産の鮎は一切入れないことを改めて決意しました。

8月17日に湖産鮎滋賀県の業者が事情説明と営業に県内水連理事会を訪れました。 返却された鮎は冷水病ではなかったとの説明で、最上川第一漁業の柏倉組合長が、水産試験場が冷水病だと言っているが試験場が嘘をついているのかと切り返してくれました。県内水連理事会、及び県水産課もようやく湖産ではだめだと理解してくれました。

平成11年からは湖産鮎は一切入れておりません。私達の漁協だけでなく山形県として入れておりません。冷水病対策は特にありませんが、遊漁者の皆さんに、オトリは他から持込みをしないで地元のオトリ販売店で購入していただくようお願いしています。

3 鮎中間育成施設について

平成9年、県水産課から水産資源活用基盤整備事業で種苗中間育成施設が補助事業として設置可能であるとのことで、舟形町に話をしたら漁協が主体となってやってみないかとの話があり検討に入りました。

湖産鮎の事情が思わしくなく、鶴岡三瀬の栽培センターが仔鮎の供給を安定的に行える施設と技術は確立しているのだから自県産の稚鮎生産を行うべきだとの意見を事あるごとに言ってきました。積極的に係わって行きたいとの考えはありましたが、こんな小さな漁協が事業やるとすれば採算性のことや、事業が失敗したときのことなど検討せずには行えないわけであります。

1 県内水面水産試験場、三瀬栽培センターの指導を確実に守って事業を行えば健全な種苗、即ち稚鮎の生産ができる。

2 稚鮎の放流は、河川水温等とあわせて適期に放流することができる。

この2点で中間育成の事業を漁協が行うことを決定したわけであります。

決断すれば早い方が良いということで「平成11年2月には事業開始ということにならないか」ということになり早急に準備に取り掛かりました。

小国川漁協は組合員1400名支部が9支部、役員は理事11名、監事3名、職員1名常勤は職員1人の小さな組合です。県の指導と舟形町の全面協力があったので施設建設もできましたし準備もできました。

施設内容は、飼育池 90t水槽 8面  720t

イ、温室構造飼育池 4面  鉄骨ビニール張り屋根付

ロ、普通飼育池   4面 

初年度は、40万尾1尾5g平均で2,000kg生産、2年度目以降は生産目標50万尾3t(1尾6g)で行っています。

0.6gの仔鮎58万尾を2月に池入れして、5月下旬頃まで育て生存率85%で6gの鮎50万尾3000kg生産となるのです。

鮎は長期間かけて大きくしていくのが基本としています。放流用だけの生産としているので特に大きくする必要がありません。飼育中改善したことは、平成11、12年は1つの池に水車1台でしたが13年以降は1台追加して2台の水車を回しております、これは池の水流を早くすることで元気な鮎が育つ、酸素が多くなる、池の中がきれいになる効果があります。

生産工程は、9月下旬から10月に小国川下流最上川合流地点近くで鮎止めにより親魚を採捕、三瀬栽培センターはその中から産卵に適した、熟した鮎を選んで採卵し、0.6gまで育て、2月に中間育成場に運び、5月下旬放流適期に5gから6gの稚鮎を放流することになります。

この間採卵の時点で冷水病菌検査を行いますので冷水病の心配は全然ありません。

3000kg生産で2000kgは小国川に放流して、余りの1000kgは他の漁協放流となります。県内水連が全量買い上げ全量配布の方法をとっています。さらに、事故等での斃死には県内水連が積立基金で支援する制度を作りました。

稚鮎の成長具合と河川水温を見ながら適時の放流ができるようになり健全な鮎を放流することができます。

平成12年から天然鮎の遡上と放流鮎の生息割合調査のために、6月28日、7月18日、8月8日の3回、4箇所の地点で調査釣りを行っております。その割合を見ますと下流地点では天然遡上鮎の割合が多く上流地点は放流鮎割合が多くなっています。

又その割合を見ながら、鮎の薄い場所、厚い場所を見ながら若干でありますが2次放流についても実験しています。

鮎の中間育成を行っている利便性を最大限生かして元気な鮎を育てて行きたいと思っています。

釣り人からアユ復活に望むもの

がまかつ・東レ・スワンズフィールドテスター 野嶋 玉造

全国の河川はいくつかの要因で悪く、特にアユ釣りは最悪の状態に陥っている

これを復活させるには、行政・漁協だけに任せておいても難しく、釣り人も一緒になってお互いに知恵を出し合い、力を合わせて行かなければならない時である。

一人一人のたずさわり方はいろいろとあると思うが、今は皆さんで手を組んで大きな力にして、復活するまで頑張らなくてはならない。

そこで釣り人にお願いです。

アユの状況が悪くなっているのは承知であるし、やむをえない状況で釣りをしなければならない事も(現状では)分かる。

本来、アユの友釣りとは簡単でなければならないはずである事もしっかり認識し、目を背けないで欲しい。

釣りも釣り人もいつも、いつまでも強くあって欲しい。 

元気なアユを取り戻すための決議

いま、全国の川はアユの不漁が続き、危機的な状況にある。

本来、川が持っている環境は、豊富な水量と良好な水質・水温が確保され、アユを始めとして多くの魚達が生息できなければならない。

古くから、私たち人間は川からの自然の恵みを利用し発展してきた。しかし、自然環境を軽視してきた結果、川と人間のすばらしい関係を壊し、様々なヒズミや河川環境の問題を発生させてしまった。

不漁の原因として、アユなど魚達の遡上や降下に支障となっている河川横断工作物の存在、低水温や濁水の発生問題、瀬と淵といった魚が棲みやすい構造を持った川の減少、アユの冷水病の発生、異常繁殖したカワウによる深刻な食害などが挙げられ、これらが複雑に絡みあっているものと考えられる。このような問題は社会的・経済的にも影響が大きく放置できない状況にある。

よって、これらの問題を釣り人・漁協・行政が一致協力して、元気なアユを取り戻すことを目指すため、下記事項を関係機関に強く要請する。

1 天然遡上アユなどの移動障害となっている河川横断工作物について早急に対策を実施し、川の連続性を確保すること。

2 アユなどの生息環境が乏しい河川において、瀬と淵の再生を始めとする生き物に優しい施策を流域全体に推進すること。

3 ダム・発電所等からの放流水対策を実施し、河川水温の上昇を図ること。

4 アユ冷水病について、感染経路の解明と防疫対策の一層の充実を図るとともに、ワクチンの早期実用化および治療法の確立をはかること。

5 耐病性と再生産性を持った人工アユの品種開発をはかること。

6 カワウの被害軽減策の実施と技術開発をはかること。

7 総合的施策を必要とするアユなど魚の復活に関し、川づくりや魚づくりなど多岐にわたる課題に対応できる横断的組織を充実すること。

以上、決議する。

平成16年1月25日

アユを取り戻す全国の集い 群馬県実行委員会

副委員長 福田睦夫


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