川の環境:アユが釣れなくなった原因を考える

群馬県の川と魚アユが釣れなくなった原因【川の環境】【カワウの食害】【冷水病のまん延】【人間の一方的都合】【利根川上流の水温問題


※ぐんまの魚の生息環境を考える (平成22年4月15日開始)

河川工学に明るい建設部門のプロフェッショナル(技術士)の福田睦夫氏に「ぐんまの魚道」に引き続いて「魚の生息環境」を書いていただきました。

(すべてPDFです)
群馬の魚の生息環境を考える(11) New (最終回です)


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群馬の魚の生息環境を考える(2) 

群馬の魚の生息環境を考える(1)


群馬県の川と魚
 群馬県内には3つの水系に428の一級河川があります。この中には天然の湖や沼(6湖沼)も含まれます。 そして、ほとんどが利根川水系で423の一級河川があります。他に阿賀野川水系の只見川源流部・つまり尾瀬に3河川。そして信濃川水系で、野反湖周辺の2河川から中津川そして信濃川に合流していきます。
 県内では草津付近の酸性の川と、それが流れ込む吾妻川の一部を除いては魚が棲んでいます。日本の川や湖(陸水域)には200種類ぐらいの魚がいると言われていまして、外来魚とか汽水域にいる海の魚を除くと120種類弱と言われています。 群馬県では現在20科63種類(在来種15科33種)の魚の生息が確認されています。そして、過去に生息し今は生息確認が出来ないものが5科10種います。 釣りの対象魚としては、川の上流部はイワナ・ヤマメ、中流や下流ではアユ・ウグイ・コイ・フナなど、湖や沼ではコイ、ヘラブナ、マス類、ワカサギなどが漁業資源として利用されています。
アユが釣れなくなった原因
 魚がたくさんいる川は、水がきれいで、餌が豊富にあって、隠れ家や繁殖場所などいろいろな環境が整っている健康な川だと言えます。このような川は環境保全機能がしっかりしていて、人間を始めたくさんの生き物から排出される有機物、窒素やリンなどの栄養塩類をうまく物質循環させてきれいにしている川です。
 ところが身近にありすぎて、豊かな水量とたくさんの生き物がいる川の重要性は軽く見られていました。人間生活に直接的なこと、都市を造るとか、ダムや水道や下水を造るとか、堤防を高く積み上げるとか、そういうことにしか目が行っていなかったから、川をどんどん駄目に、不健康にしてしまったのです。
 アユを始め、魚が釣れなくなった原因は、大きく分けて「河川環境の悪化」「カワウの食害」「冷水病のまん延」の3つが挙げられます。そして、これらの原因を引き起こしているのが「人間の一方的な都合」、つまり身勝手さが大きく影響していることも忘れてはなりません。
川の分断                                           (※坂東大堰の現状はこちらのPDFをご覧ください)

利根大堰
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坂東大堰
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 自然の川は、水によって森から海まで、いろいろな物質やエネルギーが運ばれ、そしてプランクトンや水棲昆虫、魚といった食物連鎖など生態的なことも上流から下流までつながっているのが本来の姿です。
 しかし、このつながりを人間の手によって絶ち切られてしまったのが現在の状況だといえます。利根川について見てみると、河口堰、その上流に利根大堰、さらに上流に数々のダム群、そして支流にある取水堰や落差工、砂防堰堤や治山堰堤など横断工作物、これらが魚や水棲昆虫など生き物の登ったり下ったりする活動を妨げています。一応、魚道がある場所もありますが、うまく機能してないのが現状です。

  川と海を行き来する魚は、アユを始め、サケ、遡河性のヤマメ、イワナ(サクラマス・アメマス)、そしてウナギなどが挙げられます。この多くが行き来できなくなって、川や湖の漁業は放流に頼らなければ成り立たないということになってしまいました。 そして、安易な放流によって、地域の固有種の乱れや病気のまん延を引き起こす恐れも増えてきてしまいました。 さらに、大水によって土砂が移動して川が常に姿を変えていることは、いろいろな環境が出来るという点で生き物にとっては非常に大切な事ですが、この作用も横断工作物で絶ち切られ棲みづらくなってしまっています。

 アユについて、その生活史を見てみると、秋に川を下ったアユは中流から下流の細かい石がたくさんあるところで卵を生みます。孵化した仔魚は流下して、冬の間海で過ごして、春に遡上を始めます。利根川だと4月上旬くらいです。中流域まで達したアユは、石についたコケを食べて大きくなります。そして日照時間が短くなる秋に川を下って卵を生むといった1年で一生を終える魚です。放流アユも、4月上旬頃から各漁協が管理する河川に7〜10gぐらいの稚魚を放流します。あとは天然と同じにコケを食べて大きくなります。放流している種類は群馬県産人工アユ、海産系人工アユ、(最近は放流も減りましたが)琵琶湖産アユなどです。

 このアユが河川の構造物によってどのような影響を受けるかというと、 まずは、海に降りる場合、泳ぐ力の弱い稚魚は流れに乗って下ります。そのため大量の水を取水する所では、海へたどり着ける本流を降りられず、迷入という致命的なことが起こってしまいます。埼玉県水試の調査では利根大堰で取水する武蔵水路へ6〜11億尾、多い年では94億尾もの稚アユが入り込んだという調査結果が報告されています。この多くは死亡し、一部は東京湾に下ると推測されます。東京湾に下ったアユが江戸川を伝って利根川に登れば良いのですが・・最近のNHKの番組では多摩川にたくさんのアユが登って、それは利根川由来のアユだったと伝えていました。

 そして、何とか海にたどり着き大きくなって川を遡ってきても、利根大堰の高い壁に阻まれてしまいます。ここには魚道がありますが、川幅400mの間に幅3.5mのものがたったの3本だけです。さらに、その登り口を探すのがまた大変で、右往左往しているうちに密猟者に釣られたり、鳥に食べられたりして、魚道を登れるのは平均すると20万尾・約2トンだと言われています。群馬県内で放流するアユが20〜25トン程度ですから、その1割にしかならない数字です。

群馬のアユは、江戸川のアユ!
利根川のアユ、特に群馬県まで遡上してくる天然のアユは「江戸前のアユか?」それとも「九十九里産のアユか?」と言うことについて考えてみたいと思います。 

利根川は下流の茨城県、埼玉県、千葉県の県境付近の関宿というところで利根川本流と江戸川に分かれます。利根川は江戸時代よりも昔は東京湾に流れ込んでいました。
また、これと平行して渡良瀬川も東京湾に流れ込んでいました。その東側を流れる鬼怒川が銚子の太平洋に流れ込んでいたのですが、徳川家康が江戸に入城してから江戸を水害から守るためと水戸方面からの水運を作るために利根東遷と言う大事業を始め、利根川と渡良瀬川・鬼怒川をつないで、現在のように銚子で太平洋にそそぎこむ利根川の流れをつくりました。
そして古い利根川は埋め立てて昔の渡良瀬川を使って東京湾に流れ込むようにしたのが江戸川です。

ですから、今でも利根川は分流とは言え江戸川を通じて東京湾とつながっていて、その波打ち際はアユの子の絶好のゆりかごとなっています。この東京湾で大きくなったアユは桜が咲く頃に荒川や多摩川、江戸川に大量に遡上しているのです。

ところが、荒川の秋ヶ瀬取水堰や多摩川の調布取水堰には魚道があるのですが、残念なことに江戸川の場合は水閘門(洪水を流す水門と船を通す閘門が一体となった施設)というのがあって魚道が無くアユの遡上をさまたげています。
水閘門が開くのは、水量が増えた時や舟が通る時だけですが、その時にうまく通過したアユだけが利根川水系にのぼってくるということが分かっています。
そして水閘門より上流で漁協が待ち受け網などで採捕して放流種苗として売っている事実もあります。

このため利根川本流だけでなく江戸川ルートのアユものぼれるようにする必要があるのではないか。いや、むしろ江戸川のアユの方が群馬県の天然アユには重要なのではないかと考えています。

そして、海からの距離を調べてみると、利根川河口から前橋までは200kmもあるのに比べ、一方の江戸川は河口から137kmと63kmも短かく、1日にせいぜい2〜3kmくらいしかのぼらないと言われているアユですので、80日もかかってのぼるのと55日弱で到達するのとでは1ヶ月近くの大きな違いがあることも分かりました。
つまり、同じ3月下旬にのぼりはじめたとしても江戸川のアユは利根大堰をゴールデンウィークのころ通過して5月中旬には前橋あたりまで来ていることになるのですが、九十九里産のアユは5月下旬にやっと利根大堰を通過して、前橋には6月中旬ころに着く計算になるのです。実際には銚子からのアユは水温の関係でのぼりはじめが遅くなっています。
さらに利根川河口には河口堰があって、その魚道はアユにとってのぼりづらいとも言われていますので、量は少ないのではないかと考えられますし、アユは水温が高く、水質の良い川を好むと言われていますので、途中にある鬼怒川や渡良瀬川を選んでのぼる可能性が高く、利根大堰をこえて群馬県までのぼってくるアユは少ないのではないかとも言われています。


つまり「群馬県内の利根川に遡上してくるアユは、銚子からのぼってくる九十九里浜育ちのアユよりも江戸川をのぼってくるアユの方が多いのではないのか?」・・・東京湾育ちのアユ=江戸前のアユ・・・と思われるのです。


このようなことから、利根川のアユの生態を研究する必要性が出てきますし、江戸川からのぼってくるアユのため川の連続性を確保する施策が重要ではないでしょうか?
水位の変動

大雨による増水
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 水位の変動が、なぜ悪い影響を及ぼすかと言うと水が急激に減ると棲める場所が面積的に減ってしまいますし、比較的浅い場所にいる小さな魚や卵などは水がなくなって死んでしまいます。増水すると急流ができて、川の直線化で避難場所が無くなっていると、泳ぐ力の弱い稚アユは流されてしまいます。さらに、有機物や栄養塩も水棲昆虫や微生物に利用されずに流され、魚の餌となる水棲昆虫もアユの餌となるコケも流されてしまい不毛の川となってしまいます。そして増水と減水の繰り返しはアユにストレスを与えますから冷水病などの病気が発生しやすくなるということも起きてしまいます。

 水位が変動する原因には、ダムの渇水期の貯留や増水時の放水のほか、道路などの舗装やコンクリート水路の整備、川の直線化、森林の荒廃などが考えられます。 昔は土のところが多くて、雨が降っても地面に染み込んだり、土で出来た水路を時間をかけて流れたりすることが多かったのですが、最近は舗装によって表面を流れ、すぐに水路に入ってしまいます。そして水路も流れやすく造られていますから一気に川に流れ込んで増水してしまいます。そして川の直線化が、今まではあちこちにぶつかりながら時間をかけて流れていた水を海まで早く流してしまいます。これで水位の低下が早やまります。 また、水を貯めて徐々に流す役割をしていた森林も手入れ不足によって荒廃しているところが増えて、その機能が弱くなってきてしまいました。

水温の低下                                                  (※利根川上流の水温(冷水)問題
 自然の川は、上流域では森林が川を覆って日光による水の温度上昇が押さえられて全体的に水温は低く、年間を通しても、一日の変化も格差が小さくなっています。 中流域は日射量が多く水温の上昇があって、年・日較差も大きくなります。下流域は水量が増え水深もあって水温の上昇率や年・日較差が低くなると言われています。
  アユが育つ中流域では、水温の上昇によって珪藻や藍藻というコケが良く育ち、それを食べて大きくなるわけですが、水温が低いとアユの遡上量も減ってしまいますし、藻の成長が悪くなってアユが育たなくなります。さらに冷たい水によってストレスが溜まるので冷水病に罹りやすくなってしまいます 。

 水温低下の原因としては、ダムの底水(水温躍層ができて底の水温が非常に低くなる)の放水、発電用の管路や放水路の中を日光も当たらずに長く流下するための低下、急激な出水による低下などが考えられます。

濁水の発生

大雨による濁流
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 アユは濁った水よりも清らかな水を好みますから、濁っていれば嫌って登ってきませんし、せっかく登っても下ってしまうこともあります。また、濁った川では日光が川の中まで差し込まずアユの餌となる藻の成長が悪くなりますし、藻に泥が付着して同じ量を食べても栄養分の量が減ってしまうとともに魚の味も落ちてしまいます。さらに鰓にシルトや泥が付着すればストレスが増えて冷水病の発病原因ともなってしまいます。

 濁り水は、普通、大雨による土砂崩れや浸食で発生しますが、河川工事やダムの管路に溜まった土砂の放流で発生したり、森林などの緩衝地帯まで農地にしてしまった地域でも一度大雨が降ると土砂が流出したりして、真っ黒な水が流れ出してしまいます。
 さらに、家庭雑排水や工場廃水、家畜の糞尿などが流れ込んで水質も悪化していますから魚にとっては棲みづらい環境といえます。

瀬と渕の消失

川の直線化
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 川は水の流れによって川の三要素、つまり土砂の浸食、運搬、堆積が起こります。この川の三要素による川の環境の変化を撹乱といっています。
 この作用によって川が曲がりくねり、渕ができ、瀬ができます。岸辺には水溜りやワンド、自然の穴などができ、瀬には浮石もたくさんあって、餌を獲ったり、休んだり、隠れたり、卵をうんだりする場所がたくさん作られています。いろいろな環境があるから、いろいろな生き物が生きていけるのです。これを生物の多様性と言って、自然環境にとって、とっても重要なこととなっています。

 ところが、川を堤防で押さえ込んで川幅を縮め直線化して、横断工作物で分断してしまいました。瀬や渕が無くなり、自然堤防の穴も、川岸の水溜りやワンドも無くなってしまいました。川の環境が悪くなって棲みづらくなったのですから、魚が減って釣れなくなってしまったのです。

石やれきの減少

落差工と河床低下
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 河川横断構造物は土砂の移動も妨げています。一見、災害を防いでいるのだから良いこと見えますが、横断工作物があると、大水のときに工作物の下流の石が流されても、上流からは石の供給が無くなってしまいます。これが原因で河床が下って基岩が露出して平坦化してしまいます。基岩が出なくければ更に河床が下って工作物の根が露出して崩壊の恐れが出てきます。そうなると危険ですから河床を安定させる工事を行って、さらに川が平坦になってしまいます。

 川の変化が乏しくなると生物の多様性も失われ、水も遊びながら流れることが無くなって、微生物たちによる川の浄化能力も落ちてしまいます。さらに、アユの餌となる藻類や水棲昆虫が付着する石が無くなって川の生産能力は低下してしまいます。

【カワウの食害】                                                       カワウ対策についてのページ  
 カワウは、鵜飼でよく使われているウミウと良く似ていて、河口付近や湖などに棲む体長躍80cm、羽を広げると1.3mくらいの真っ黒な鳥です。1羽が一日に魚を約500g食べます。他にも魚を捕食する鳥はたくさんいますが、カワウは集団で魚を大量に食べてしまうので被害がとても大きくなっています。ちなみに群馬県の試算によると年間約97トン、被害額約2億3千万とはじき出しています。

  カワウは、昭和40年代に激減して、全国でも3000羽くらいになってしまいレッドデータブックに載るほどでした。その後、徐々に増えて群馬県でも昭和50年代後半から飛来が見られるようになり、平成8年頃から追い払いを開始し平成12年からは有害鳥獣駆除が始まっています。しかし、銃による駆除は危険が伴って場所が限られるため県内どこでも出来ると言う方法ではないので効果が今一つと言えます。

【冷水病のまん延】

冷水病の症状


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 アユが釣れなくなった一番の原因が冷水病といわれています。フラボバクテリウム・サイクロフィラムという細菌による病気で、貧血や体の色が白く濁ったり、えら蓋の下の方から出血したり、体に1〜2cmくらいの穴が空いたりして、ひどい場合は死んでしまったり、まとまって流れ下ったりしてアユ漁に大きな被害を与えています。

 冷水病は、もともとは北アメリカのマス類の病気で5℃〜10℃という水温が低い時期に発生したので冷水病と名前が付いたそうです。しかし、アユの場合、病気が発生する水の温度が16〜20℃となっていて冷水では無いので、細菌の種類が少し違うようです。この水温になるのが5月から7月で、この時期は放流して大きく育ち、やっと解禁になる時期なので漁協や釣り人にとっては大きな問題となっています。

 日本では昭和60年頃にマスの仲間にこの病気が見られるようになり、アユは昭和62年に同じ様な症状が徳島県の養殖場で見つかったのが最初と言われています。自然の川や湖で見つかったのは琵琶湖が最初で平成4年でした。その頃は全国の放流稚魚を琵琶湖に頼っていたので全国的に広まってしまったと言われています。 群馬県でも平成7年頃から冷水病の発生がひどくなってきて、それからは獲れる量が100トンを切るようになって、未だに減り続けています。  

 この病気は菌を持っていても必ず発症する訳ではなくて、アユにストレスが溜まると病気になるようです。ストレスの原因は水温の急激な変化や濁り水、縄張り争いによるケンカなどがあげられます。しかし、菌に感染するしくみや病気になる原因に不明な点が多く治療方法も少なく、完全に治す方法はまだ見つかっていません。

 のため、群馬県では琵琶湖産のアユ稚魚に頼らなくてもいいように、群馬県独自の人工アユをつくりだし放流できるようにしました。 また、冷水病菌を持っていないか検査して無菌のアユだけを放流するようにして、今年は解禁までは病気の発生を完全に押さえ込むことができました。 それでも、川自体に菌が残っていたのか、他の魚に付いていたのか、釣り人が冷水病の発生した川から釣具に付着させたまま持ち込んだのか分かりませんが・・毎年、多くの川で発生している状況が続いています。

※ 釣り人ができる冷水病対策

川には率が低くとも必ず冷水病菌がいると思ってください。冷水病が発生しないように釣り人の方も次の事を守ってください。
川を汚したり、壊したりしないこと、冷水病対策を率先して実行することは、マナーと言うより釣り人の義務です!

@他の河川で釣った鮎をオトリとして持ち込まないで下さい。
  
(冷水病に罹っている川のアユを持ち込み、冷水病をまん延させる恐れがあります)
A
釣った鮎をオトリとして飼って使用しないようにしましょう。
  (アユを飼ってオトリとして使う事は冷水病に罹りやすく、その川の冷水病菌の濃度を高め感染率を上げることになります)
Bオトリは保菌検査をした健全なアユを購入して使用しましょう。
  (無菌の健全なアユをオトリとして使う事が冷水病のまん延を防ぎ、長く釣りを楽しめます)
C釣った鮎が小さい・奇形、死んで鮮度が落ちたなどの理由で、川に戻さないようにしましょう。
  (冷水病は弱ったアユやストレスを受けたアユが発生しやすくなります。釣ったアユは全て持ち帰りましょう)
D使ったオトリを弱ったから、養殖じゃ要らないからと言って放流するのは止めましょう。
  (オトリとして使われ、疲れたアユはストレスだらけで、冷水病が発生しやすくなります)
E死んでいたアユを見つけたら川から出しましょう。冷水病かなと思ったら漁協に連絡しましょう。
  (死んでいるアユを放置する事は、冷水病に罹っていた場合、川の冷水病菌の濃度を高め感染率を上げることになります)
Fウェーダーや船、オトリカンなど釣具を消毒しましょう。酒屋などで食品用のスプレー式消毒アルコールを売っています。
  (冷水病がまん延している川で使った釣具は菌が付着している恐れがあります。天日干しや薬剤で消毒しましょう)

【人間の一方的都合】
 アユが釣れなくなった原因の川の環境、カワウの食害、冷水病のまん延について、良く考えると全てが人間自体が引き起こしてきたことだと言えます。
 産業革命以後、人間は巨大なエネルギーを使えるようになりました。科学技術も発達して自然を征服できると思った人間は、快適な生活を送るため都市を造り、増水から生活を守るため蛇行する川を直線にして、濁流を海に早く流す方法をとりました。 エネルギーや飲料水を確保するためにダムを築き、水道や下水という第二、第三の川を造って、本来の川から水を奪ってしまいました。替わりに生活や工場で使って汚れた水を川に流して排水路代わりにしてきたのです。
 水があちこちにぶつかりながら時間をかけて流れることも無くなり、有機物や栄養塩を体の中に取り込んで水をきれいにする微生物や水棲昆虫も少なくなって川の浄化能力も多様な環境も失ってしまいました。 昔は川にはたくさんの生き物が棲んで、汚れた水も三尺流れればきれいになるとか、病気の魚でも川に戻せば治るって言われていたのですが、今はその逆になってしまいました。
 カワウの問題もそうです。本来、河口付近に棲んでいたのですが、人間は都市を造るために、その棲みかを奪ってしまいました。カワウだって生きていかなければなりませんから、内陸の川や沼に移り住んで、そこに棲む魚を食べ始めてしまった、ということになります。
 さらに車、船、飛行機などを使って移動が容易になりました。今まで行き会うことの無かった生き物、例えば日本のアユと北アメリカの冷水病菌、日本のコイとイスラエルのコイヘルペスウイルスが行き会って新たな病気が生まれてしまったのです。
usunegawa.jpg (18871 バイト)  もっと悪いことに、その病気を人間がまん延させてしまったのです。安ければ良いと病気の魚を放流する人、病気がまん延している他の河川からオトリを持っち込む人、ウエーダーなど釣り道具を消毒しないで川に入る人、ただ釣るのが面白いから生態系も考えずに外来魚を違法に放流する人、ゴミを持ち帰らずに捨てていく人、こんな風に「人間の一方的な都合」を押し付ける、つまり自分勝手なことをやってきたから、人間の心が病んでいるから川も魚も病気になったのだと思います。

 川が分断されて遡上に期待が持てない現状を考えると、放流に頼らざるを得ないわけですが、少なくとも生態系に配慮して、他の生き物と共存できる川の環境を整えること、病気のない元気な魚を育て放流すること、数釣りを競うだけでなく病気のまん延防止を図ることなどは、マナーというより私たち人間の義務だと思います。

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